銀の魔術師と妖精死譚

不死者は語る 01
雪だ、と香葵が呟いた。
振られて空を見上げると、曇天から、いやに白い雪が降り始めていた。

「――――」
そうだ、雪だ。
妖音が夏葵に小刀を持ってきた夜に見た夢。
そこでも、雪が降っていた。

雪が何もかもを隠す。不穏な気配も企みも。
そういえば雪の字の由来には、掃き清めるという意味があった。
全ての物を掃き清めて、本来の姿をさらしだす。
そこにあるのは、うわべを飾りたてることで隠じ閉ざされていたもの。
夏葵はひどく暗澹とした気分になった。
「俺も不死者、同族……か」
ず……と重いものが胸に沈みこむ。
「…………」
「夏葵、この後はどうする」
ちん、と音を立てて、あかりが小刀を鞘に納めた。
「しばらく経過を見る。矢島からヒトガタの回収もしないといけないし……どこか結界の張ってないところで見てないと」
そのあとに妖音を呼び出して、刀と、ヒトガタをどう処分したものか相談する。
「矢島の方はまだなのか?」
「……うん、あれきり連絡は」
「そうか……」
夏葵は再び空を見上げた。

不死者、彼岸、あちらとこちらの理、閉ざされているという鬼門、仮面の男。
狭霧神社、異界への道――神のいない社。
ひどく、ひどく重い。

「……行こう」
あかりがそう声を掛けた。
「え、行くって……どこに?」
あかりはもう歩き出している。

夏葵はもう一度空を見上げた。
雪の降り方が激しい。荒れそうだ。