銀の魔術師と妖精死譚
8.復讐者は眠る 01視界の端に危険を覚えた。
はっとして視線を巡らせると、4人の少年少女がいる。
――凪夏葵。
しまった、とも、見つかった、ともその瞬間に思った。
その目に、尋常ならざる覚悟を見た。
――ま、ずい
とっさに身を翻す。
逃げきることができるという自信はなかったが、逃げるほかない。
だが、その判断すらも遅かった。
足音、衝撃。
「――っか、は」
ずぶりという鈍い衝撃に一瞬遅れ、思考回路を激痛という熱が焼いた。
背から腹に突き抜けた刃物に引きずられ、動くことができないまま、傍らの茂みの中に転がされた。
茶髪の少女に、ひどく無感動な目で見降ろされる。その手にはナイフよりも大ぶりの刃物。
「で、とりあえず刺したはいいけど、これどうするの?」
彼女は確か――そうだ、汐崎あかり。神社の。
まだ刃物を構えている。4対1、抵抗は無駄そうだ。
汐崎あかりに手首を足で押えられる。仕方なしに、左手で傷を触った。
おかしい。どうにも治る気配がない。
意識の端に、すうっと冷気が入り込む。
「問題ない。死んだら消えてなくなるから」
凪夏葵が視界に入ってきた。
「私を、殺すの?」
「…………」
「ふ、ふふ、とりあえずはお礼を言っておこうかしら」
死ねるか。それならば本望だ。
だが、
「でも、どうして、邪魔をするの?」
「……俺の思考は、お前には関係ないだろう。お前が決行したように」
「気に入らなかった? でも、百年後にも同じことが言える? 私を同じ、死ねないバケモノのくせに」