銀の魔術師と妖精死譚

7.魔術師は夜を駆け 03
武藤斎の探索と追跡は、最初から走る羽目になった。
何せ時間が時間だ。うかうかしていると、こちらが武藤斎を捕まえるどころか、こちらが警察に捕まってしまう。
そのうえ、この時間帯はまだ出歩いている人がいるから、不審がられず、かつ武藤斎を見落とすことのないように動かないといけない。

夏葵が示す方向へ進みながら、範囲を広く探す。
あかりは汗をぬぐった。暑いのに寒い。
足を止めた夏葵は、魔術に集中し、香葵は先ほどの着信を確認している。
矢島からの連絡だった。
てっきり4人は作業が終了したものかと思ったら、どうやら違うらしい。
「……うん……え、いやどうだろう…………。わかった、サンキュ」
頷きながら応対していた香葵は、通話を切るか切らないかのうちに顔を上げた。
「武藤斎が川西地区を西に向かってるのを見たって。場所は平瀬中学そば」
「てことは、こっちに来るな」
矢島は平瀬中の北にいるって、と香葵が補足する。
「西に真っ直ぐ……とすると、明桂だな」
「学校周りはやたらヒトガタが多かったからな。向こうにとっても何か目を付けるようなところがあったんだろう」
夏葵が再び足を動かす。
あかりは小刀を持ち直した。いつでも抜けるように、抜きやすいように。

――予感があった。

激突は近い。