銀の魔術師と妖精死譚

5.街灯の下の嫌な奴 04
口元が歪にゆるみ、笑みをかたどった。
「その通り」
蠱毒だ――その言葉に、物珍しそうに目が細まる。
「別段珍しくはないだろう?人の生存競争ですら、見方によっては蠱毒の手法そのものだろう?」
「その蠱毒は、どれくらいのものだ」
「形状はまちまちだがな、生きた人ならば、かすり傷で致死だ。不死者は個体差によるが、一般的急所を一突きで致命傷になる」
「なかなか物騒だな」
低い笑い声がそれを肯定した。
「さすがにすぐに持ってくることはできないのでな、次に来るときに用意するとするよ」
「その時は担当者を替えてくれ」
貴様とは二度と会いたくないもんでな、と隠しもしない嫌悪を向ける。
「随分と嫌われたものだなあ」
そういうと、ひとしきり笑った。
「妖音」
用事が済んだなら帰れ。
ぴしゃりとそう叩きつける。
カーテンを引いた。
切れ切れの雲間からかすかに月光が差し込む。
それが、蒼眼に冷たい光となって宿った。
手が翻り、薄刃がひらめく。
妖音はそれを認めると、長居を避けるかのように闇の中にずるりと沈んだ。

く…………くく、くくくくく…………く…………

低い笑い声が部屋に反響を残したように、闇の中からしばらくこぼれ続ける。
夏葵は眉をひそめると、無言で床にナイフを突き立てた。