銀の魔術師と妖精死譚

fragment1
武藤斎は寒空の下、ぼんやりと歩いていた。
「本当、残念」
手を組んでおきたかった。
凪夏葵も、そうだ。
「一人でやる、か」
時刻は深夜0時を回ろうとしている。

「わたしも、一人でやらないとだめかしらね」
斎は住宅地から出た。
平瀬に住む、他の魔術師にあってきたのだ。
凪夏葵と敵対する可能性があるため、取り込めるかと思ったが。

『私は、誰とも組まない』

暗い公園に一人いた彼女は、静かで深すぎる影を宿した目で、ただそういった。
表情からも声からも、感情は一切うかがえない。
『一人でやって』
明確な拒絶。
話を聞く気すら、彼女は持っていなかった。
それが、彼女が示した、彼女の道。
「今日はもう遅い、わね……」
暗い街灯の下、斎は腕時計を確認して、そうつぶやいた。