銀の魔術師と妖精死譚
3.おまじない 01あれから1週間ほど経った。中等部に在籍するあかりの弟からの情報がぼちぼち入ってきた。
嫌いな人物、あるいはライバルを呪う、ということで流行しているらしい。
方法はかなり簡単だ。
まず紙を二枚、あるいは人形を2体用意する。
それを同じ型に切りだし、赤色に染める。もともと赤い紙を使うのはなし。
その2枚のうち片方は燃やし、その灰は相手と関連のある場所に撒く。
もう1枚は赤く染めたものと一緒に人目につかないところへ捨てる。
亜流では地面に釘やくいで打ち込む、髪の毛を用意する、埋めるなど、いくつかある。
最初の型は不明だが、これが一番シンプルなものだ。
「人形もそうだが、消しゴム削ったものもあったぞ」
「藁人形まで出てきたわよ」
日曜にあかりと利が神社内のあちこちを捜索すると、案の定というか、ペンキ塗りの藁人形があった。
「誰よ喧嘩売ってるのは」
「確かに藁人形と言えば神社に丑の刻参りなわけだが……」
やられた神社としてはたまったものじゃない。
「神社を入れると、今までに8か所にあったのか」
人形の数は14。
「ほかにもあるらしいけど、はっきりとわかってないから、トモはもうちょっと情報集めてみるって」
「大学はいまいち引っかからないらしい」
夏葵はその情報に頷いた。
何というか、嫌いな相手にそこまで手をかけるとは、ご苦労なことだ。
「かなりの数が出てきそうだな……出所はどうだ」
「不明」
ほとんどはどこで聞いた、誰から聞いた、と間接情報だ。
「高等部では流行ってるの?」
「いや、知ってる奴もいるけどいまいちだ」
「……面倒なことになったな」
中学で流行しているとなると、公立校から情報収集がまるでできない。
夏葵が面倒臭そうに髪を引っ掻き回した。
「ところで香葵は?」
「さあ?」
昇降口で香葵を待っているのだが、その香葵が一向に来ない。
「先に帰るか?寒いし」
「んー……それもそうだな」