銀の魔術師と妖精死譚

2.赤い人形 04
帰途、夏葵は交差点に向かった。
やっぱり赤色のヒトガタだ。
街灯の灯りでは見にくいが、探せば他にもありそうだ。

というか、ある。
ヒトガタではなく、人形だ。
黒く見えるが、暗いからというだけではないだろう。
あちこち糸がほつれている。
毛糸の髪の毛は、わずかに元の色が光っている。
「…………」
信号が青になりメロディーが流れだす。
夏葵は人形のある茂みから立ち上がると、誰もいない交差点を渡った。
コートのポケットで携帯電話が着信を告げる。

利からのメール。
場所と添付ファイル。どうやら見つけたらしい。
夏葵はのんびり歩きながら添付ファイルを開いた。
ダウンロード数秒、暗めの画像が開く。
薄っぺらな紙でできた、赤黒いヒトガタ。
もう一つ、黒い人形。

「…………」

街灯の下で立ち止まり、夏葵は少し沈黙した。
舌打ち。
夏葵は踵を返した。
――どういうことだ。