銀の魔術師と妖精死譚
2.赤い人形 03「ねえ、利、あれがそうじゃない」
「どれだ」
あかりは窓下の歩道を指差した。
歩道は街路樹や植え込みが作られている。
あかりはそこを指差している。
「あの一番背の高い植え込みの根元」
「見えない」
角度と反射が邪魔。
「降りるか」
「そうだな」
放課後、あかりと利は通学路から外れてファミレスに回った。
ぼちぼち生物など教えながら耳を澄ませていたが、いまいち引っかかる話はない。
そのかわりにそれらしきものがひっかかった。
やたら響く階段を駆け下り、あかりは茂みの前にかがみこんだ。
「これか」
利は携帯でそれを撮った。
フラッシュで照らされたそれは、確かに紙で作られた赤のヒトガタ。
「――ねえ、人形があるよ」
「人形?」
あかりが茂みの奥に手を伸ばした。
「ほら」
布で作られた女の子の人形。
だが、ヒトガタと同じように赤黒く染まっている。
「お前、そんなの拾うなよ」
「これも一応写メっておいてよ」
利は無言でシャッターボタンを押した。
人形はもとあったように茂みに投げ込んでおく。
「ちょっとした死角探せば、結構ありそうだな」
「あー……うちの神社にもあったりして」
どちらともなく黙る。ありそうだ。
「土日に掃除兼ねて探すか」
「そうね」