銀の魔術師と還りし人々
24.夜明け 03「発狂よね」
「発狂だね」
慧とあかりは結界の手前でつぶやいた。
ここに来ると呪歌だけではない。
ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、
「ねえ慧兄、許す許さないは、どっちかっていうとわたしの台詞だと思うんだけど」
「ほら、逆恨みだからこれ」
これはストーカーも裸足で逃げ出す。
「あー……うっざぁ」
闇戸か狭土を投げつけてやろうかと思ったが、それで封石が割れたら困るので諦めた。
結界の中に飛び込んで、容赦なく影を切り刻みたい。
過去に飛び込んだことはあるが、呪力で火傷のような状態になった。治らなさ過ぎて懲りた。
「ねえ慧兄、これ呪力収集やったらやばいかなぁ」
「収集できるの? これ、やってる最中に呪力中毒で死にそうだけど」
夏休みに夏葵が即興でかなり酷い状況を収めたのでできるかと思ったが。
「その前に調査しないといけないからダメか」
「あかりがダメっていうなら、そうだね」
ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサジ、ユルサ……ジ、……ユ、ル……サ…………
視界が明るくなる。
…………ユ、ルサ………ジ…………
空気が澄む。
呪力が静まる。
――やっと朝だ。