銀の魔術師と還りし人々
23.山中夜禍 04朋也は外に目を配りながら、ひらひらと手を振った。
朋也の張った結界を避けて、影がぞろぞろと過ぎていく。
「朋也君、今、どうなって」
「どうなって、は何が?」
香葵は何を言われているかわからず首を傾げた。
「ここはどうしてこうなってる」
「んー。よくわかんない。原因は秘密」
「なぜ根幹を叩かない」
「――無理だよ」
無理、と朋也は繰り返した。
「なんで夏葵さんですら影響を受けたと思う?」
そう簡単なモノだったらとっくに片付いてると思わない?
「――やってみないとわからないだろう」
「原因も特定してないのに? 合わせて準備していないのに?」
夏葵さんと矢島さんがタッグ組めばわからないけど、バラじゃあ無理じゃないの?
朋也のその言葉には棘も嫌味も感じられなかった。
「てなわけで、殴ってでも飛び出さないなら、面倒臭いし、ここから動かないでね。あ、今何時?」
矢島が携帯を開いた。
「3時半」
「あーじゃああと1時間凌げば何とかなるかなあ」
俺これ以上仕事したくないから、動かないでね。
朋也はそういって笑った。