銀の魔術師と還りし人々

21.夕闇の社 01
「こういうところで行動一致……ごめん」

放課後、夏葵と一緒に狭霧神社に向かった香葵は、矢島悠治と出くわして思わずそういった。
間髪入れず2人ににらまれる。
あかりとお互いがからむとこの2人は怖い。
矢島もいい奴なのに、と香葵は心の中でつぶやく。
古文の成績が悪いもの同士として、香葵はうまく付き合っている。
その場にもし夏葵がいた場合はガン無視しているが。
無言でにらみ合っている姿に、小学生が避けて通った。
「えーと、ねえ。神社、行くんじゃ……」
「うん。行くよ?」
「ああ、行くがな」
お互いに気に食わなさすぎて、同じ行動をされるのを無視できないらしい。

正直、見ていると胃が痛い。
通行人の視線が痛い。

「お、俺、先行くわぁ……」
そそくさとその場から逃げ出すと、ふざけんな誰が許すかと罵声が飛んできた。
「はぁ」
勘弁してよ。



神社が近くなると、どん、どん、と空気が震える音がし始めた。
――ず…………ん
「これ、鳴動……?」
「そうだな」
「この時季はいつもだよ。音だけがしてる」
「……俺はさんで無視と喧嘩しないでくれるかなあ」
ふん、と両側で鼻を鳴らされる。
抗議は聞き入れてくれないらしい。
なんで俺がこんな目に合わないといけないんだよと口の中でもごもごと言う。
早くあかりたちに会って帰る。

状況が見えないうちにそう決めたことを香葵は後悔した。