銀の魔術師と還りし人々

fragment5
ざ、ざ、ざ、ざ、ざ………………
ざわ、ざわ、ざわ、ざわ、ざわ………………

山がうるさい。
いくら待ち構えていたとはいえ、あかりはため息を吐いた。
居間に寝そべっていたあかりは体を起こした。
少し冷えるが、窓は開け放っている。
かすかに聞こえるのは、宝刀が震える音。
ガシャンと音を立てて、ついに台がひっくり返った。
「あー……」
「来たか?」
「みたいだね」
部屋から降りてきた利の顔も見ずにあかりは返事をした。
縁側から降りる。
軽い音を立てて、水の入っていた瓶子が割れた。
あかりは社に上り込むと刀を取り上げた。
気が重い。
「明日は欠席になるわね」
「そうだな」

今年もこの季節か。
はあ、と重いため息。
面倒くさいし鬱陶しい。

一斉に燈火が消えた。
ざ、ざ、ざ、ざ、ざ――――――
ざわ、ざわ、ざわ、ざわ、ざわ――――――