銀の魔術師と還りし人々
18.霊視者 05「なぜそこまで詳しい」
「何が」
夏葵が起きたことで、居間に緊張が走る。
「お前の使う言葉の大半は組合が正式採用してる用語だ。別組合に属している場合などは言葉が合わないとこがたびたびだ。お前の登録はなかった」
どういうことだ、と夏葵は目を細めた。
「誰が言うかそんなの」
矢島は突っぱねた。
殺気が両者間に漂う。
「夏葵――まずそこはいい」
夏葵は鼻を鳴らした。
「矢島も煽るな」
「嫌だね」
「……だめだこいつら」
「だから幼稚って言ったでしょ」
「で、質問会は終わり?」
「あ……うん」
そっか、じゃあおいとまするね、と矢島は鞄を取った。
あかりがカーテンと窓を開ける。締め切っていたせいで部屋の中はかなり暑い。
「おわったの?」
「終わったよ。悪いね慧兄」
「んー別に? 壊してないみたいだし?」
玄関を回った矢島が顔を出した。
夏葵が嫌そうな顔をして睨む。
「ねえ、汐ちゃん」
「あー今度はな」
に、という前に矢島が引っ張った。
場が凍った。
いわゆるほっぺちゅー。
「じゃーねー」
すぐに離れると矢島は走って逃げた。
それより早く夏葵が追いかけはじめる。
縁側から飛び出して、足は痛くないのか。靴はいてないぞ。
ぽかんとした利はあかりを見た。
どうでもよさそうな呆れ顔。
「あ、あかり……」
「男って本当に幼稚だわー。理解できない」
そういって肩をすくめると、木刀を片付け始めた。