銀の魔術師と還りし人々
18.霊視者 04呪力体質は魔術師にとって大きな意味を持つ。体質次第で魔術の規模や威力に差が生まれてくる。
夏葵は呪力の漏れが激しい。裏を返すと容量も大きく、一度の放出量も大きいと見積もることができる。
あかりのように戦闘に特化していると放出は上手くない。
「見たよ」
矢島はあっさりと肯定した。
「たとえば汐ちゃんは内外が完全に分断してる。浅井は普通かな」
「普通?」
「出入りが安定してる。――たぶん汐ちゃんは周りの呪力に左右されないんじゃない?」
「ああ……」
矢島はちらと夏葵に目をむけた。
「そこのはダダ漏れ。あふれてる。非効率だし悪影響も振り撒きまくるんだろうね」
「矢島」
あかりと利に窘められ、矢島は肩をすくめた。
「俺は? おれはそれが訊きたい」
「香葵くんは……境がない、かな」
「どういうこと?」
「自分の呪力と他の呪力の違いが一切ない。自分の呪力は全部流出してるけど、外から吸収して、それが循環してる。循環しながらまた流出してる」
あれ、地球の水の循環みたいな、と矢島は言った。
「てことは、」
「呪力の影響うけまくりだし、影響させまくってる。あ、でも呪力不足になることだけはないよ」
いいのか悪いのかよくわからない。
「だから魔術干渉引き起こすの……?」
「干渉……? 起こすと思うよ」
香葵がため息を吐いた。
「こんな体質見たことない」
「矢島、とどめを刺すな」
利は再度注意しながら、魔術も見れば呪力がわかるんだろうな、と口にはしなかった。
突然夏葵が体を起こした。