銀の魔術師と還りし人々
18.霊視者 01静まる様子のない夏葵は、いい加減にしろとあかりにひっぱたかれると、部屋から出てこなくなった。
「どうする? アレ」
「どうするっても」
「落ち着くまでは放置するにしてもさ。どうせ鍵かけてるでしょ?」
「あ、あのさ」
あかりと利は香葵を振り返った。
香葵は帰ってから無言でマグに口を付けていた。
どこか表情が青白い。
「無理そうなら夏葵抜きでもいいんだけど――俺、矢島にさっきの意味、聞きたい」
「それは俺らもだ」
「もしかしたら聞かない方がいいことかもしれないけど」
ただ夏葵を抜いたら拗ねまくって手に負えなくなるわよ、とあかりが嫌な顔をした。
「なんで男ってあんな幼稚なの? うちの父親といい……」
「いや、俺らが幼稚なのはいいとして、今は」
「……そうね」
あかりは面倒くさそうにコーヒーを注いだ。
矢島も矢島だ。何か隠していることをどうやって見破ったのか知らないが、あれはわざと刺さるように言っている。
「夏葵が出てきたら、一丁矢島連行するか? 香葵が夏葵を連れてくればいいわけで」
「でもどこで」
「うちの神社は? 夏葵にとっても矢島にとってもテリトリー外でしょ。慧兄にも控えてもらえればいざというとき安心なんだけど」
「人の土地でドンパチ始めるほど馬鹿じゃないとは思うけど……あの様子だとどうなるかわかんないしな」
「…………俺が」
俺が訊きたいんだ。香葵はそういうと頭を抱えた。
――俺のせいだ。
消え入りそうな立ち入れない呟きに、あかりと利は顔を見合わせた。