銀の魔術師と還りし人々
16.夜警 02川西地区に入ってから、夏葵はダウンジングを再開した。
先ほどより反応が強い。
あかりがふと足を止めた。
顔をそらす。
「…………。声?」
「は?」
「向こうの区画かな……なんか違う声っていうか、気配っていうか」
「夏葵は」
「だいたいそっちだな。――あかりの耳はどうなってるんだ?」
夏葵には聞こえないらしい。
あかりの耳の方が早いと判断したのか、夏葵は頷いた。
あかりが角を曲がる。
しばらく耳を澄まし頷いた。方向が特定できたのか。
「あっち。下瀬橋の方」
あかりは迷う素振りなく方向を切り替えた。
目を細める。
これだ。
見たことのない流れが一筋だけ混じっている。
下流からか。
川沿いに下る。
細い流れだ。おそらく流出した一部だろう。
――見えた。
小路に足を踏み入れる。
空気が震える。
赤い光が闇の中に灯る。
それが動いた。