銀の魔術師と還りし人々

16.夜警 01
「で、わかった?」
「だいたいのポイントはな」
「着いたらしらみ潰しに探せと」
「そうなるなだろうな」
夏葵は視線を手元に落としたまま頷いた。
校門前で落ち合った4人は、普段行くことのない平瀬の東へ足を向けた。
日付が変わって、そろそろ1時間近く経つ。
「で、川西地区ってどこだ?」
あかりと利は一瞬口を閉ざした。
「お前、調べてないのか」
「場所はさっき調べだしたんだ」
瀬川の西側にはあるだろ、と夏葵がどうでもよさそうに言う。
平瀬は町の東に瀬川が流れる。
川西地区は瀬川が大きく曲がる内側にある地域だ。
「あの辺りは田んぼとか畑ばっかだぞ」
「あそこも藪蚊すごいのよね」
夏葵はダウンジングを頼りに歩いている。
あかりが並んで道を選んでいる。
利はそれを後ろからついていく。
久しぶりに夏葵の機嫌が悪くない。
邪魔者がいないだけで素直な奴。

夏葵がため息を吐くと、ダウンジングをやめてしまった。
「どうしたの?」
「反応が弱い。こりゃ寝てる。慎重にやるよりさっさと終わらせた方がいい」
それならと一行は足を速める。
「でも魔獣って夜行性が多いんじゃなかったっけ?」
怪訝そうに首をかしげる香葵。
「香葵、あんただって昼夜逆転することくらいあるでしょ。魔獣ってそれくらいやるわよ」
「あ、なるほど」
利は電柱を見た。
「そろそろ川西か……」

夏葵がふと、眉をひそめた。
「何か、気がざわつくな」
「何も湧いてなければいいんだけどね。急ごう」