銀の魔術師と還りし人々

15.亜麻色の少年 03
「言っとくけど、そんなに心配する必要ないぞ」
ハンカチでウーロン茶をぬぐう。
この気温ならすぐ乾くが、シミが付きそうでげんなりする。
「そりゃ、あれだけ露骨ならバレバレだろ」
「そうじゃなくて、矢島はあかりに告ったことある」
「ああ……」
「それも3回」
「――――は?」
夏葵がとてつもなく胡乱げな顔をした。



「中2の夏休み前。中3は冬休み前。最後に留学前」
「……馬鹿だろ? 頭おかしいだろ?」
「俺もやりすぎだと思う」
あと、遠からず4回目がある気がする。
「軽くストーカー……」
「朋也も同じこと言ってたな。それに夏葵に喧嘩売るとかいい度胸だよなー」
大物だ。
「あのな、喧嘩も何も、あいつは春先の1件知らないだろ」
「あ、そっか」
この間帰ってきたばかりだったことを、利はすでに忘れていた。
「てことは夏葵ってただの派手おと」
夏葵が紙パックを握りつぶそうとしたのを認め、利は口をつぐんだ。
「何かしてきたら、呪詛か何かで毎晩悪夢地獄にしてやる」
とても冗談にもならない夏葵に、利は虚ろに笑った。