銀の魔術師と還りし人々
15.亜麻色の少年 02「はあ?」
「夏葵、怖い! 怖いから!!」
顔のきれいな奴は凄むと迫力3割増しなことを夏葵は一向に理解してくれていない。
「あーはいはい。――で? だからウロチョロすると?」
小学生か? 幼稚園児か? と夏葵が言い捨てる。
今の夏葵もあまり変わらない気がするが、言ったが最後ずたぼろにやられる。
夏葵は利から奪い取った紙パックを開けながら顔を歪める。
「ていうかあいつ、知ってるな」
「知ってるって、何を」
「付き合ってること」
「知ってるだろうね」
夏葵からこんな言葉を聞く日が来るとは思ってなかった。ごちそうさま。
それがどうしたと聞くと、夏葵がストローを咥えた。
「俺のこと『会長』って呼ぶ。必ず」
そういえばそうだ。利は矢島の行動を思い返した。
「あれってどう考えても」
「わざとだろ」
「……だよな」
夏葵が何やら呪詛と殺気のこもった呟きを漏らす。
今日は厄日だな。
慧と夏葵がこれだ。
そう思うと同時に、
「お前がそんな顔俺に見せる日が来るとは思ってなかった――うわっ」
顔にウーロン茶をかけられた。
――やっぱり厄日だ。