銀の魔術師と還りし人々

15.亜麻色の少年 01
「お前それさ」
言おうと思って、やっぱり怖くなってやめかける。
夏葵にじと目で見られ、結局吐く。
「どう考えても嫉妬かやきもちだろ」
しかも幼稚な。
夏葵の眼光が鋭さを増した気がした。
利は口を閉ざした。
口を開けにくい。何を言えばいいのかもわからない。
しばらく沈黙が落ちた。
「や、矢島はさ……中等部からなんだよ。部活が同じで親しくなったんだ」
2年から3年にかけて、あかりが部長を務めた。
当然、副部長という生贄は利。
「そこに副部長もう一人必要だよなーってなった時に、引き受けてくれたんだよ」
ほら、生徒会もあかりの人使いの荒さ知ってただろ? というと、夏葵は頷いた。
「周りは気づいてたけど、そりゃもうすごくて。それで一気に広まったくらいでさ」
矢島は1年間、嫌な顔ひとつしなかった。
だから無下にできない。
さすがのあかりでもそれは同じらしい。
「……なら何であかりに付きまとう」
夏葵は不機嫌というよりも仏頂面になってきた。
「えーと」
何かオブラートに包んで言う方法はないかと一応の足掻きで脳内検索する。
ない。もう諦めた。
待たせた夏葵の口がへの字になっている。
この言葉の後にどんな罵詈雑言が飛んでくるか。

「えー……矢島ってな……あかりのこと好き、なんだよな……?」