銀の魔術師と還りし人々
14.害獣駆除班 01朝から食卓は険悪だった。
「まったくさ……俺だって一応まだ学生なんだよ? 組合っていう割にはあそこは人使いが荒いんだよ」
「そうだね」
「暇持て余してる組合所属、いるでしょー? 確かにテリトリー内は内部管理が基本だけど、ここほとんどが学生じゃん」
「……そうだね」
飯がまずくなる、とは口が裂けても言えない。
慧の不機嫌の前に利は不満の口を閉ざした。
何やら早朝に、組合から慧に連絡が入ったらしい。
何でも手違いで魔獣か何かが逃げ出したとか。
逃げ出したのが1週間前。随分と悠長なものだ。
魔術師の目撃や呪力の残滓から行く可能性のある所は要警戒とのことだ。
もし来て、発見の場合は要捕獲とのこと。
別に捕まえてもこちらに利益はない。
組合は戦闘用の舞台を小隊レベルで数百と管理しているが、空白地帯と追跡班しか出していないらしい。
経費削減、らしい。
仕事の経費を削減する奴があるか。
夏葵のあれこれで、利も組合について思うことろはある。
が、愚痴だらけの慧に同調する気も刃向う元気もない。
「あ、」
夏葵。
「何?」
「夏葵のところにも連絡行ってるんじゃないかな」
「そうか! なら話は簡単だ。利、後は頼んだ」
「は……? え!?」
がしゃがしゃと食器を下げると、慧は怒涛のごとく出て行った。
というか、
「洗い物も俺やらなきゃいけないの?」
返事をしてくれる人はいない。