銀の魔術師と還りし人々

13.帰りし少年 03
「夏葵ー?」
「……ん?」

先を歩いていた夏葵は、いぶかしむような香葵の声に足を緩めた。
どうやらしばらく様子をうかがっていたらしい。
「俺、何かした?」
「は?」
「めちゃくちゃ機嫌悪いじゃん」
「……ああ悪かったな」
ちょっとそれ返事になってないよ! と香葵が後ろで声を張る。
夏葵は反応せずにすたすたと歩く。
香葵が並んでは何やら騒ぐが、問いかけには一切反応しない。
夏葵は顔を歪め、ぎりと歯を噛んだ。
余計な苛立ちが募る。
「香葵……しつこいぞ」
ただでさえ無意味に苛立ちが募っている。
それも、じりじりと体内で焼けるような苛立ちだ。
横目で視線を投げると「ごめん!」と香葵が飛びのいた。
あかり達が楽しいのはいい。
にぎやかなのも、それはそれで一向に構わない。

ただ、あの矢島悠治。
夏葵はずっと目の動きと表情の変化を観察していた。
見せつけるかに見えた動きは気のせいにしても。
夏葵は肩ひもを強く握った。

――気に入らない。