銀の魔術師と還りし人々

10.ケガレの跡に再生は来る 03
物が全然足りないが仕方ない。
「此処にありし万象に通ずる魔法円、今渦巻き澱みし流れを此処で沈めん」
あかりは好きに暴れている。どちらかというと好き勝手に体術を極めている。
「この澱に棲まいし禍物は此処に滅びて朽ちん。さればなせ。今我が手中で澱を除かん」

幻視と波長があった。――いける。
「……かく成せ」

ぞっ、と腐臭、禍気、死臭が夏葵の周囲に密集する。
眩暈と吐き気がした。
息ができない。
満月が何かを言っている。聞こえない。
烏天狗が何かを喚いている。何だ。
意識が揺さぶられる。
呪力の収集点となっている左手の感覚が麻痺する。
ぐにゃりと視界がゆがんだ。

その視界の端に、不遜な顔をした誰かがいた。