銀の魔術師と還りし人々
10.ケガレの後に再生は来る 02ギャアギャアギャアギャアギャアギャア
もう一波くるかと、慧と利が身構えた。
結界にかかる負荷も強い。
そろそろ、とどちらもそう思った。
ばしん、ばしん
「過ち犯しけむ種種の罪事は 天津罪 国津罪 許許太久の罪出む――」
利は紙垂を取った。
さあどこまで保つか。
ぎし、と不穏な音が辺り一帯に響く。
山が激しく震える。
烏天狗の一人が手を振り上げた。
――が、待てど予想していた衝撃はない。
「…………?」
慧が不審げに上空をにらみつけている。
ギャアギャアギャアギャア
ギャアギャアギャア…………
烏天狗が何やらざわついている。
鳴動が静まる。
一体どうしたんだ……?
ごう、と風が吹いた。
その中に細く笛音が混じる。
この前の襲撃と同じものだ。
――逃げられる。
白木ははっとして庭に飛び降りた。
「同胞よ、枷となり楔となり彼奴等を封ぜん!!」
どっ、と森が蠢く。
ぶわりと烏天狗に幻の植物が芽吹き、地面に根を張る。
とらえたのは、引こうとした約半数。
全体の三分の一は逃した。
「母様!!」
「まかせて」
羽月はにこりと笑うと、空に消えた。
――夏葵、満月。
どうか無事で。