銀の魔術師と還りし人々
10.ケガレの後に再生は来る 01気分の重いまま、澱んだ空気から逃れるように外に出た。
ぎすぎすしている。
棟の外では満月がキレていた。
相手もキレている。
その上、飛翼に介抱されている族長を見て逆上した。
「貴様ら族長に何をした!」
「……いや戸開けただけだし」
あかりの発言に、あいてはギャアギャアとわめく。
手が付けられない。
「放っておいてもこれはアウトだったろう。あと1時間遅く来るべきだったか」
夏葵はそうぼやき、森を見てきつく眉をひそめた。
これ以上森を疲弊させると辺り一帯が死ぬ。
夏葵は舌打ちすると、何か気の利いた術があったかと脳内を検索する。
――浅井もつれてくれば良かったな。
ポケットにチョークが数本。時間が稼げれば、呪力は何とかなるか。
即興で呪力収集をする準備をしながら、あかりに暴れていいぞと言った。
夏葵は床を確かめ、チョークを走らせた。