銀の魔術師と還りし人々

8.再襲 03
一回り小さく作られた結界に、烏天狗が一斉にはじかれた。
低空飛行ではじかれた者は蔓、蔦、根に絡みつかれ身動きを封じられる。
結界を飛び出した羽月は臨戦――否、遊んでいる。
笑えないくらい速度が違う。
以前夏葵がマッハと表現していたことを思い出し、白木は一人笑った。

だが、すぐにその笑みを消す。
木の根がぐずぐずと腐っていく。
むっと腐葉土の臭いが満ちはじめる。
白木は庭石の上に避難した。地面がふわふわとして気持ち悪い。
森がざわつく。腐の呪力と増援が来たようだ。
あんまり来ないでほしいなあ。
というか、突撃組が襲撃しているのに増援を寄越す余裕があるのだろうか。突撃組がばれる前に立ったのだろうか。
行き違いそうなものなのだが、不思議だ。夏葵の雲隠れが効いていたのだろうか。
詳しく知りたいところだ。
そんなことに首をかしげていたら、横合いから香葵に思いきり突き飛ばされ、2人で地面を転がる。
上空から降ってきた数本の刃に、袂がざくりと裂かれた。
ぼやぼやしているとうっかり刺される。
屋敷に避難させられながら、降り注ぐ殺気に苦笑する。
「香葵、ありがとう」
「兄さん刺されたら俺殺されるから勘弁してくれよ」
香葵は弱り切った顔をしている。
確かに満月と夏葵なら半殺しくらいやりかねない。
「大丈夫だから、ね? ほら、一緒にみんな帰ってくるの待とう」
「……その前にこいつら帰ってくれないかなあ」

白木は少し瞬くと、それもそうだね、とまた辺りを見渡した。