銀の魔術師と還りし人々
8.再襲 02頭が割れる。
烏天狗の数が増しているのか、それとも声が増しているのか。
ギャアギャアギャアギャアギャアギャア
ギャアギャアギャアギャアギャアギャア
声が山の結界を揺さぶる。
「飛翼の奴め……」
本気で呪う。
何とんでもないものを平瀬に呼びつけた。
今度のうのうと現れたら焼き鳥にする。
利は幣をドスドスと境内に突き刺した。
「花、紅、お前たちは戻ってろ」
「う、うん……」
あまりの烏天狗にすくんでいたらしい二人はそろそろと憑依対象の衣のあるところへ向かう。
入れ替わりに慧が険しい顔をして入ってくる。
「親父は」
「社に入ってる」
山の結界は強いが、潜り込まれることもある。絶対ではない。
「……迷惑」
慧が珍しく怒りを見せている。
木刀を地面に突き立て、ぱんと柏手を一つ。
すがすがしいどころか、気配が禍々しくなっている。
「――天津神は天の磐戸を押披きて、天の八重雲を伊頭の千別に千別て聞食さむ」
慧は持参してきた塩の袋に手を突っ込んだ。
「――国津神は高山の末低山の末に登り坐て、山の伊褒理低山の伊褒理を掻き別けて聞食さむ」
慧は力いっぱい塩を一掴み、烏天狗に投げつけた。