銀の魔術師と還りし人々

8.再襲 01
「来たね」
白木は赤が差し始めた空を見上げて立ち上がった。
結界はすでに張ってある。囮の。
相手に破らせ消耗したところを羽月が出て、強い結界を張る。
夏葵が立てた作戦だ。
できるだけ長く引きつけてほしいとのこと。
向こうの手数を減らすのが狙いのようだ。
僕は戦いとか、好きじゃないんだけどな。

森が疲弊する。

羽月はやる気満々といわんばかりに屈伸をして待ち構えている。
健一はまだ縁側で様子見、香葵は控えているというよりぼんやりと空を見ている。
破れそうな結界に、烏天狗が殺気立つ。

森よ唄え、
白木は小さく呟く。

今に破れる。

「――我が同胞よ。声の限りに。森よ集え、我が同胞よ。この危機に」
めきめきと結界が裂かれる音と、深くから近づいてくる気配。
「――汝らの声が尽きる時、汝らの血が流れる時、我、共に果てん」
不穏当な音とともに、結界が崩壊した。