銀の魔術師と還りし人々

fragment2
「できますか」

柏の大木の下に座る老人に、黒髪の女は口を引き結びそう訊いた。
「……周辺の森と、森の呪力は確かに引き受けよう」
里は待て。老人はそういった。
「件の男ですね」
老人はひげをしごきながらゆっくりと頷いた。
「身元が判明しないことには土地まで保証できぬ。――さもなければ」
「去らなければ」

その通り、と老人は答えた。

「……後日再び伺わせていただきます」
「了解した」
女が頭を下げた先で、老人の影が薄くなり、緑の中に掻き消えた。
女は長い礼の後に上体を起こすと、上空へ飛び去った。