銀の魔術師と還りし人々

6.2翼の雛 04
「…………」
「んーと……」
夏葵はため息を吐き、香葵は視線を泳がせた。
あかりは「ま、あんたらだよね」と片目をつぶって聞いている。
白木はどう見ても八咫鴉以外の血が入っているし、夏葵と香葵は人間との混血だ。
それでここに襲撃をかけてのか。
満月の部屋の前とあかりの部屋の障子はとばっちりである。
「狙いは3人、か」
「いえ、4人いますが、1人は所在不明です」
白木もおっとり頷く。
「それで、それから?」
飛翼はお茶に口をつけ、話を続けた。



その騒ぎは、武人衆のみならず、里人経由で族長の耳にまで入った。
族長がなぜ方針転換を決めたのかはわからないが、族長はその男と対面した。
甘言だけで族長が方針転換するとは飛翼には思えなかったが、何か納得させるものがあったのかもしれない。
結果としては、その男は里の内にとどまった。
飛翼は何であれ八咫鴉は八咫鴉なので、敵対はしたくない。その程度の認識しかもっていなかった。
その後、飛翼が耳にしたのは、八咫鴉を襲撃するかもしれないという話と、物が以前よりも腐りやすくなったという話である。
一部からは呪力の格が違う八咫鴉に敵うのかという声もあったが、会合で何かあったらしい。
飛翼はまだ武人衆に入っていないこともあって詳細は知らされることがないのだ。
しかし、これに踏み切ったのは襲撃の5日前に転機となるきっかけがあった。

武人衆でありながら放浪を繰り返す姉が帰省していた。
だが、姉は里の入口で足を止めると、そこから先には入ってこない。そして一言「この腐臭は何?」と言った。
死臭が里の中からするという。
それで飛翼は初めて鼻が慣れていたことに気が付いた。
姉は耐えられず、すぐに出て行った。それくらいひどかったらしい。
そして飛翼は、襲撃2日前に武人衆の会合を盗み聞いた。
男は平瀬に住んでいる混血と会ったと言ったので、まずはそこからになった。
細かい場所は占で確かめるとなった。
次にこちらに襲撃する手筈となっていた。
が、実際はこちらに来た。占でこちらが示されたのだろう。

飛翼は襲撃の前日に里を出た。
しかし、出る前にそれと出会ってしまった。

――死臭。

「子供、何を考えている」
何気ない風を装って振り返ると、そこには件の男がいた。
いつもは奥ノ宮にいるのに、なぜ。
しかしそれ以上に気になるのは死臭と、飛翼に向けられた濁りきった眼である。
飛翼の企みがそれでばれたのか、飛翼が出た後数人の武人衆に追われたらしい。
まいたというより、途中で引き返していったらしい。
そして平瀬に行った。
襲撃は平瀬では行われず、飛翼の情報は遅れたものとなってしまった。
「おそらく再度――いえ、成功するまで襲撃は続くと思われます」
「なぜ?」
「族長もその男も本気です。冗談で武人衆を里から出したりはしません。つながりのある他の里にも働きかけるような話がありました」
族長も男も――いえあの男は、本気で潰す気なんです、ここを。