銀の魔術師と還りし人々

5.空から烏が落ちてきた 04
食卓での会話はさらに滅茶苦茶になった。
食卓もひどいが、親がいないのをいいことにこの際放置しておく。

話が落ち着いたのは、慧が「で、君はどこの誰かな?」からだった。
「我?」
「そう、君」
行儀が悪いが、慧は手にした箸でそいつを示した。
「我は飛翼と申す。烏天狗の一なり」
満腹になったのか、飛翼と名乗った少年は箸を置いた。
烏天狗ということは化け物だ。
化けたらどうにも古臭い衣装だったのはそっち系の格好をしていた、ということか。
「主らはどのような者か」
「俺は慧。この神社の息子。そっちのひろってきた?――のは利ね。俺の弟」
「了解した。主の弟はたいそう無礼であった」
「お前が言うな」
最初に喧嘩吹っかけるような口聞いたのはどっちだ。
「まあその真偽は置いておいて。飛翼君、君はどうしてここに?」
慧は利と飛翼のいがみ合いを無視した。
「我は八咫鴉のご子息を訪ねて参った」
「んーと、誰?」
慧は味噌汁をすすりながら利を見た。
わからないものはわからないので「知らない」と答える。
「居るのだ! 確かにこの辺りに!」
「何か容姿と特徴は?」
慧は完全に人探しの質問をしている。
「容姿? 八咫鴉は……そうだな。髪が艶やかで長く、色は金だ。肌が白く、眼は青のような。風を自在に操る」
慧は聞きながら首をひねる。
利は半眼をさらにすがめた。
思い当たる節がある。はっきりと見たわけではないが。

――夏葵の母親。

金の長髪だけは確かだ。重力を無視したことをやらかしたと思ったが、遠目だったから自信はない。
まあ、そうでなくても夏葵は異常だが。
化け物の息子――納得はいく。
昼も過ぎたし、この時間なら夏葵も出るか。
「……ちょっと外すわ」