銀の魔術師と還りし人々

5.空から烏が落ちてきた 02
鞄と一緒に烏を居間に放り、手を洗い水を飲む。
ぐ――きゅるる……
「…………」
利は思わず背後を確認した。
ほかに思い当たるものがない。
「……おい、そこの鳥」
「ぐ、ぅ……はっ! ここは!?」
「おい、そこの鳥」
「……!! キサマ、未だそこに居ったか!!」
「……おい、返事をしろ、そこの鳥」
なぜか無性に苛ついた。
「キサマ……下賤な人間ごときが我を鷲掴みにするとは……!!」
話が成り立たない。が、

ぐ――――………

「…………」
「…………」
利は開きかけた口を閉じた。
「……おい、そこの鳥。お前腹空かして落ちてきたんじゃないか。違うか」
「ぐっ……」
図星らしい。
「……鳥って何食うんだ。鳥の餌?」
「我を鳥と、餌とは何事ぞ!!」
「……拾うんじゃなかった」
「何を!!」
突然飛び上がった烏が爪を剥いてとびかかってきた。

「ぎゃっ!!」
「いって……!!」

とっさに対抗したまではよかったが、そこから先がよくなかった。
なぜそうなったかよくわからないが、利の上に乗っかって呻いているもの。
人。
口を押えて悶えているのは、舌でも噛んだか。
それはいいとして。
「おい、鳥」
「ひひゃま、はれをまらひょりと……」
「お前がなんでもいいからどけ!」
「うるひゃ」
ぐーきゅるる。
腹の虫が強烈に自己主張をする。
利はぐったりと脱力すると、烏だったと思われるものを押しのけた。
腹の虫が鳴いているのを聞くたび気が萎える。
そいつの鼻先に指を突きつけた。
「食い物だったら何でも文句はないな」
こくこくこくこく。
食べ物の影がちらついた途端におとなしくなる。
餓鬼か獣か。
利は舌打ちしながらそう思ったが、そもそも相手は鳥だったと再度舌打ちした。