銀の魔術師と還りし人々

4.黒羽根 01
「黒い羽根か」
「烏天狗だっわたよ」
「随分と突然だよね」
白木、夏葵は目が覚めてしまい、帰ってきた満月と車座になっている。
あかりは少し離れたところで壁にもたれてうたたねをしている。
「あかり、寝るなら部屋戻れよ」
「んー……障子が木端微塵……」
「げ、マジ?」
「あーあ」
白木が障子を開け放った外に目をやった。
一応片づけたが、破壊された縁側ばかりはどうしようもない。
いまだに呪力が凝っている。
それはいい。当然のことだが。

――腐臭。

「兄さん、あそこさ」
「なに?」
「腐ってる?」
「うん。腐り始めてる。ちょっと変だよね」
何処を吹く風で白木はのんびりだ。
「なんで烏天狗に喧嘩売られるんだ? 姉さん何かしたのか?」
「いやなんであたしなのよ」
「兄さんは、まずない」
はたはたと手を振って否定すると首を絞められた。
「……はーい、そもそも普段交流あるの?」
「ないわ」
壁だと寝心地が悪いのか、あかりは畳に横になった。
「……じゃあ烏天狗ってやっぱり風と親和性高いの?」
「普通に考えればな」
「いずれにしても腐の呪力はないはずだよ」
あかりは返事の代わりにふあぁとあくびをした。
「狙いがよくわからないんだよね」
「姉さんだろ。部屋の前大破なんて」
また首を絞められる。
「朝になったら母様にも聞いてみよう。ほら、知ってることあるかもしれないし」
「そうかぁ?」
「あっても忘れてそうで怖いわ」
まあそういわず、と白木になだめられた。
「今夜はほら、まずあかりさんの部屋を移そう?」
「あー、そっか」

夏葵が思い出して見やると、あかりは完全に寝こけていた。