銀の魔術師と還りし人々
3.夜襲 03とっさに結界をそちらにも広げたが、間に合うかどうか。
殺す気か、人質か。どっちもよくない。
翼をもつ種族の移動速度は、目視以上に速い。
ぎきぎり、か――
白木がそう思った瞬間。
――バキッ
右ストレート一撃。
白木は目を瞬かせた。
鼻が曲がり血が流れ、あれは歯も折れたろう。
魔術師とは踏んでいたが、あれほどいい一撃を持っているとは。意外も意外だ。
それでも素手。得物持ちが飛びかかるが、あっさり吹っ飛ばされ沈黙する。
あれは痛い。骨折はいった。
結果として、誰一人として寄らなくなった。
それでも背中に威圧感を感じる。
何というか、これは怖い。なぜか。
夏葵は次から次へと、よくまあそんなに出てくるというほどの物量戦を繰り広げている。こちらもこちらで寄りたくはない。
ふと離脱者が出た。
夏葵とにらみ合っていたらしい。
笛の音。
次々と離脱していく。追撃できる満月はすっ飛んで行った。
厳しいと踏んだか。
敵の消えた空を睨んでいた夏葵が、落ちて来たそれを捕まえた。
「……ところで香葵はまた寝てんのか」
「そういえば」