銀の魔術師と還りし人々

2.帰省戦 03
食事中にいちゃついていた夫妻は、夏葵がキレて追い出した。
その後満月が「花火をする!」と騒いだが、誰も彼もが追いかけっこで汗だくなこともあり、風呂に投げ込まれた。
「兄さん、手伝ってられなくてごめん」
「いいよいいよ。そのかわり明日お風呂掃除お願いね」
「ん。了解」
「バケツ1個で足りるよな」
「足りるだろ。たいした量じゃないし」
そのたいした量じゃない花火は、満月が袋から出している。
「ろうそくはー?」
「袋の中」
「ライターは?」
「兄さん、マッチとかない?」
「うん。待っててね」
白木が出ると、入れ違いに親2人が戻ってきた。
「打ち上げるような派手なのないの?」
「……手に持って振りまわすのがわかってるから買ってないけど」
打ち上げる系でなくとも花火を持たせることに、あかりは危険を感じた。



「……あれ、ネズミ花火じゃないの」
あかりは縁側の柱にもたれたまま夏葵にそういった。
羽月と満月の火遊びが危険で夏葵はぴりぴりしている。
花火を用意した健一は危険な火遊びに混じっている。
夏葵は振り向くなり「それ投げるな!」と怒鳴る。きょとんと止まった瞬間、花火が火を噴いた。
驚いて取り落とした花火は、どう考えても投げる先がこちらだった。
危険極まりない。
「あーあーあー。こりゃ与えていい花火は線香花火だけでしょ」
近所の児童会より危険である。しかも大の大人(?)2人によって。
「待て!それ持って走るものじゃねえぇぇ!!」
泡を食った顔で絶叫、走って逃げる香葵
をあかりは白い目で追った。