銀の魔術師と捕縛の糸

spinoff-健一-
-univ 4th.sum-

夏季休暇で山に来ていた。
どちらも就職が決まり、卒業論文にも苦労をしていなかったことで時間を持て余していたこともある。
暗黙の了解で、互いが魔術師とも分かっていた。
それで、呪力の不可思議な流れの噂を健一が仕入れてやってきたのだ。
「この山だな」
途中まで車で上がってきたが、そろそろ道がないので車を降りた。
かなり高くまで来ているようだ。
目の前の林に分け入り、触媒になる植物もぼちぼち採取する。
「質がいいな」
「呪力の差だろう。ここの呪力はきれいだ」
林の奥の方は、さらに呪力が強い。離れていてもわかる。
「もう少し分け入ってみるか?」
「そうだな」
ざわざわと風が吹く。
そして――何かが降ってきた。

ばさばさバキバキうわっぐえっぐしゃべしょ

当初小田原はぽかんとしていたが、我を取り戻すと慌てて寄ってきた。
「健一!?」
健一は一番下にいる。
先に起き上ったのは、当然ながら上にいた方だ。
――上。
「いったい!! あんた誰!?」
「……痛いのはこっちだ。どけ」
乗っかった状態のそれに、健一が呪詛の呻きをこぼす。
「……あんた誰?」
「どけってば!」
乗っかったまま首を傾げられ、健一は腕力に任せて身を起こした。
乗っかっていたのは地面に落ちた。
若い女――女だと思う――だった。
「いったーい! 何よもう!!」
「あんた何?」
健一はわざとそう言った。誰、ではなく何、と。
誰、というのはためらいがあった。というのも、容姿と格好と呪力がどうにも食い違っている。
その容姿は日本のものではなく、その恰好は現代のものではない。呪力は人のものではない。

「あたし?」
女は自分を指差し、きょとんと首を傾げた。