銀の魔術師と捕縛の糸
episode-世代交代- 04説得じゃ落ちないと分かったのか、生徒会は途中から泣き落し方針に走った。
昼休みに生徒会が来るたびに、「お前さっさと引き受けてやれよ可哀そうだろ」という雰囲気が教室に流れる。
「ご愁傷さま」
もはや定位置の夏葵の正面であかりはからからと笑った。
「引き受ければいいのに」
「他人事のように」
「他人事だもの」
最近はこの掛け合いを毎日のようにしている。
「浅井がやればいいだろ。俺はもう、これ以上厄介事を引き受けるのはごめんだ」
「厄介事っていうより、生徒会長なんて態のいい雑用係だよ」
利が嫌そうな顔をして言う。さすがは経験者だ。
「あかりは手伝ってくれないしさ……」
「考査のヤマ張ったじゃない。理科の」
「でもレベルが違うだろ。中学と高校じゃあ。俺、生物だって自信ないのにさ」
生物だって、というより、あらゆる理科に自信がないのだが、利は。
「夏葵だったら別に成績に影響する可能性なんて皆無だろ」
「あかりだって同じだろ」
「あかりはだめだ」
利は即答した。
「中学の時、部活でどれだけ俺が苦労したか」
「部活の予算でもめた、とかいう?」
違う違うと、あかりは笑った。
「中学の時――わたしドッジボールやってたんだけど――わたしが部長で、利ともうひとり副部長がいたのね。私の仕事は方針を決めるだけで、実務は全部副部長」
「こいつは周りを巻き込む。ついでにもめごとを引き起こす」
「もめてないわよ。あれは地方勝ったのに遠征費出さないとか抜かしたからでしょ」
「はいはい」
利は相手にするのをやめた。
「だからこいつに『長』のつくものをやらせると、苦労するのはもっぱら周りだ。今回は生徒会と職員と俺、夏葵、香葵ってところか、生贄は」
「生贄は聞こえが悪いわよ。手足と言って」
「それ召使か?それとも奴隷か?」
「夏葵、あんた刺されたい?」
勘弁、と夏葵は口の中で呟いた。
「……夏葵が生徒会長だったら、ねえ?一応手伝わないでもないんだけど」
「俺と香葵引きずっていって、お前は何もしないんだろ」
「あらー、よくおわかりで」
「何年来の付き合いだと思ってる!」
「生まれてこの方」
利が声を荒げれば荒げるほど、あかりはおもしろがっている。
これはもう駄目だな、と夏葵は疲れた目で二人を眺めた。