銀の魔術師と捕縛の糸

episode-世代交代- 03
「で、決心はついたの?」
翌朝、あかりは挨拶もなしに夏葵に問いかけてきた。
「俺がやることは決定事項じゃない」
「わたしにとっては決定事項よ。どうせ引き受けることになるだろうから、さっさと諦めたら?」
「どうせって何だよ、どうせって」
「利は教師受けはいいけど、夏葵ほど票は集まらない。わたしの場合は生徒会も教師も立てるわけがない」
昨日も首をもたげた疑問が再び湧いてきた。どうせならこの機会に聞いてしまえ。
「なあ」
「何?」
「お前一体何やったんだ?」
「んー、結構いろいろやった。かいつまんでも長いよ」
「さらに端的に言え」

あかりはしばらく考えてから口を開いた。
「教師陣と決裂したのはまあセクハラ?を派手にやりこめたときとか、授業で潰したときとかに。あと生徒会で1年の時委員長やってて、クラス総会とかでわたしがいろいろやりこめちゃった人がいたり。部活の予算で会計ともめたこともあったっけ?」
どうもまだまだやってのけたことはありそうだ。
「聞いたら決心ついた?」
「つくかよ」
あかりに返事をした場所は、偶然にも生徒会室と目と鼻の先だった。
「確かに教職員からはいろいろ言われたらしいけどさ。いっつも寝てるから」
そりゃどうも、と夏葵は呟いた。実はあかりも授業を聞いていないという点で大差なかったりするのだが。
「まあ早めに諦めることね。どうせ毎日昼休みに通われるだろうから」
あかりは実に他人事のようにそう言って、教室に踏み込んだ。