銀の魔術師と捕縛の糸

20.降り立つモノ 04
予想外の人物の登場に、茫然と眺めているだけだったが、夏葵は小田原が消えてから復活した。
「なんで……何で母さんがここに!?」
「あーあ、逃げちゃった……まだ死んでないだろうなぁ」
「答えろよ!」
「夏ちゃん、香ちゃんと夏休みにいらっしゃい」
「おいこら!!」
夏葵は手に持っていたカードを地面にたたきつけた。
「何の情報を持ってるんだ」
何か情報を持っている、夏葵はそう確信した。
「んー?」
答えろ、夏葵はそう言って踏み出した。



「小田原……」
突然のことに対応出来ずにいる間に、ことは終わっていた。
終わってしまった。
怜奈はふらりと足を進めた。
夏葵の居る場所と、怜奈のいる校舎外はそう離れていない。すぐに辿りつく。
何も考えないままに夏葵に殴りかかった。
何も考えていない怜奈と、先に覚醒した夏葵とでは、敵うわけもない。当然のようにあっさり避けられた。

「あんたが……あんたが……!」
私から親も先輩も奪ったのに、戦力まで奪うのか。
ただそれしか思い浮かばなかった。
小田原個人に対する感情は微塵も浮かばないことには、何の疑問もなかった。
まだ、奪うのか。

夏葵は怪訝な顔をした。
「――親?」
一瞬のその隙に、思い切りひっぱたいた。
「どいうことだ?」
その声を背に、怜奈は走った。逃げた。
「さあ?」
最後に聞こえたのは、夏葵の母親の声だった。