銀の魔術師と捕縛の糸

2.視線 03


――見られている
――見られている
――どこから、どこからも
――息苦しい
――身体が重い
――苦しい
――苦しい、苦しい……



息が上がっていた。
こめかみを伝う汗が冷たい。
酷くぼんやりとした夢だ。
夏葵は寝がえりをうとうとして、身体が酷く重いことに気がついた。
寝汗か、夢のせいか。
頭だけ起こして窓をみる。外はまだ暗い。
時計を見ると、まだ早朝も4時である。暗い筈だ。
起きる気にもならない。
寝そべったまま、荒い呼吸を繰り返す。
全身の血管に流れているのは鉛か水銀か――そう錯覚する。
身体が重い。息苦しい。

それから――視線。

夏葵は起き上る。こんなことをしているのがどこのどいつだ。
組合の誰かか、それとも他にだれか――夏葵は考えることを放棄した。
選択肢が増えるだけで、答えが出るわけではないのだ。
もう少し、寝ていたかった。

もう少し、もう少し――