銀の魔術師と捕縛の糸

20.降り立つモノ 02
「うちの子をいじめないで欲しいなあ」
随分と懐かしい声だったが、いやに冷たい。
「その子がいじめられるいわれも、恨まれるいわれもないわよ」
そうでしょ? と、それが首を傾げた。

長い髪がさらりと流れた。
小田原は影を見たままに凍りついた。



「母さん……」
どうしてこんなところに。

ここにいること自体がおかしい人物の登場に、夏葵はどう反応していいか分からずに立ちつくした。
機嫌も悪い。領域を超えてくるほどに機嫌が悪い。
月と影の対比が眩しい。表情がよく見えない。
「夏葵」
にっこりと笑顔が向けられた。
「夏葵、あんたがソレに対応する必要はないわ」

綺麗な笑顔とは裏腹に、呪力の圧力が高まった。