銀の魔術師と捕縛の糸
19.声と怒りは宙に舞い 03体育館の中は阿鼻叫喚の地獄絵図一歩手前である。
あかりは素知らぬふりをして体育館を後にした。
なにやら出入り口でわたわたしている利と書記が激突した。
もたついていることについては、あかりも人のことは言えない。
やっとのことで壁に辿りつく。
そのまま壁を頼りに進むと、窓に行き当たった。
窓の外も白く霧で埋め尽くされている。
窓をこじ開けると、夜霧の気配がした。
確かに夏葵は「大きな呪式は夜霧に背負わせる」と言っていた。
これだけの規模ならあり得る。
夏葵の気配はかき消されて、どこにいるか分からない。
「夏葵……どこに」
「それ、やめてください」
「怜奈っ!?」
窓枠をつかんだまま、あかりは周囲を見回す。――いた。
「怜奈、あんた」
「なんであの男と組むんですか」
「…………?」
「なんであんな男と組むんですか!?」
なぜ怜奈が激昂しているのかわからず、あかりはぽかんとした。
他所者のくせに。土着の魔術師をモノの数ともしないバケモノなのに。
バケモノのくせに。
バケモノのくせに。
怜奈は止まる様子がない。
「あんな奴」
最初に死んでしまえばよかったんだ。
「……それ」
死んでしまえばよかった?
最初?
それは何のことだ、いつのことだ。
「それ、どういうことだっ!!」