銀の魔術師と捕縛の糸

19.声と怒りは宙に舞い 01
「会長、一緒じゃないの?」
「え、生徒会の方にいるんじゃないの?」
書記は困った顔をした。
「総責任者ぁ……」
ある意味こうなることなど目に見えていたのだが。
「携帯にかけても電源入ってないみたいなんだよな」
例のテロップが流れるだけらしい。一体何をやっているのやら。
珍しいのか、珍しくないのか判断に困る。
「香葵には聞いてみた?」
「今、壇上にいるから」
その一言でステージを見ると、確かに今ライブをしているのは香葵のグループだ。
「このうるさい体育館にいるとは思えないな」
「校舎、探してみる?」
そういうと書記は目を丸くした。
「あ、そっか、校舎……」
「どうした?」
「え、いや……校舎を探すってことは思いつかなかった」
そうなら行ってみるか、とあかりと利は顔を見合わせた。うるさい体育館から逃れる最大の口実ともいえる。
行く気満々の二人の会話に、書記が割って入った。
「待て待て、俺も行くよ」
二人の後ろについて、書記がメールを打ちながら歩く。



その夏葵捜しは、いきなり壁に行き当たった。
体育館の戸が開かなかったのだ。
いつぞや夏葵と対決した時と同じだ。立てつけが悪いくせにびくともしない。
「鍵……はかけてないよな」
「……かけてないと思う」
「ならあいつの仕業ね」
書記が校舎を探すことを思いつかなかったのも、結界の影響の可能性がある。
あかりは剣呑に目を細めた。今ここを突破すれば小田原を殴れる可能性が高いのだ。
「たしかに可能性は高い――あ」
利は思わず声を上げた。
一つ心当たりがある。
「あ、何?」
あかりが振り返る。
利はぎくりとしながらポケットの中に突っ込んだ手に鎖を絡めた。
ジャリ、と金属がこすれるのが分かる。
あかりがさらに目を眇めた。利は生きた心地がしない。あかりは利の挙動や目の動きには聡い。

「……あんた、何持ってる!!」

「うえ!? ちょ、何だよ!!?」
「夏葵もこそこそ何かやってるし、あんたはあんたで挙動不審だし」
「俺!? ――オイ何で!?」
「俺、汐ちゃん敵にしたくないし」
書記があかりに加勢。
何かトンデモ自体が発生していることは一応分かっているらしい。が、この書記も夏葵の暴発現場にいた一人だ。
ということで2対1。
利のポケットからシルバークロスのペンダントが引き出された。