銀の魔術師と捕縛の糸

18.祭りと戦は血に沈み 01
ゆっくりと結界が織り上げられている。
両者の間でじりじりと緊張が高まる。
屋上に降りた夜霧がぐるぐると呻いた。
ばさりと羽織った外套を、大粒の雨が叩いた。
夏葵はフェンス際まで寄った。
喧騒の消え去った校庭は雨で白く霞んでいる。そして視界の中心に、小田原和樹。
山下怜奈は見当たらないが、まあいい。
ぐうと音を立てて、夜霧の喉が膨らんだ。
結界の閉鎖が近い。
雷が落ちて、視界が白く染まる。
外套をひるがえして夏葵はフェンスに飛び乗った。
結界が完成するか。
夏葵はそれを見越して、重心を前に倒した。
浮遊感などない。
地面がざわめく。
見えるわけではないが、魔法陣が仕込まれていると思った。
嫌な音を立てて骨がきしんだ。空気が重い。
うっかり着地したら死ぬだろうな、と思った。屋上から飛び降りた時点で骨折ものなのだ。
何かの気配が近づいてくる。視界の端では、何かが鋭く光った。
接地が早いか、頭上から怒涛となって霧が雪崩れた。
鈍い痛みが走って、赤が散った。