銀の魔術師と捕縛の糸
17.始まりは声高に告げ 04翌日、あかりと利が生徒会室に行くと、珍しいことに、そこに香葵がいた。
「浅井にあかり、おはよー」
底抜けの笑顔の香葵の後ろには、不機嫌面の夏葵が鎮座している。
「なんか前線が停滞してない?」
「追加申請が原因」
周りが口々にそう言う。
「もう朝来たときから追加申請シュレッダーにかけろ燃やしちまえって、暴言の雨霰」
スキャナーの前に積まれている追加申請書類は1センチを超えている。
「あらー大変ねー」
「システム壊しておきながらよく言えるわね、汐ちゃん」
「あー、うん。ごめん。言い訳するとあれは事故よ。事故」
「事故ねぇ」
停滞前線が動いた。
ヤバい、と認識したのは3人とも同時だったらしい。
生徒会室から逃げ出す時に、背中に何かを張っつけられた。
朝、登校した時からちりちりとした緊張があった。
視線を感じる。
夏葵の近辺に呪力の干渉がある。
夏葵にとっては力押しでも勝てるため、さっさとはじめてほしいくらいだった。小田原にとってはそうではないだろうが。
先に仕掛けた場合は組合が面倒なため、相手の出方を待つのも負担の大きいストレスだ。
正午を回っても、まだ動きはない。
雲行きが怪しくなってきた。
少しばかり誘ってやる必要があるか。
天気予報は、日没から大荒れとなっている。
「雨が降りそうだな」
「降るだろうねー」
「出来るところから早めに撤収準備するように通知しておいてくれ。雨が降ったら、後夜祭を合わせて前倒しにする」
「うえええぇぇ!? そんな前例ないよ!?」
「どうせ降るのは終わるころだろ。せいぜい1時間かそこらだからどうにでもなるだろそれくらい。フレキシブルに動けよ」
柔軟性がない、と指摘すると、生徒会役員は嫌な顔をしつつ、通知を出すために部屋を出て行った。
これで動くか。
あとはあかりたち3人に仕掛けたスキャンが広範囲にわたっていればいいが。
「1時間くらい外す」
夏葵はそう宣言すると、上着を羽織った。