銀の魔術師と捕縛の糸
13.桜吹雪に隠れるモノ 05本を閉じた。
新入生が昇降口からぞろぞろと出てくる。
桜並木をくぐる彼らに、花弁がふりかかる。
――あの中に、
おそらく、居るのだろう。
夏葵は頬杖をついた。
――さて、わかるか?
わかったら儲け物程度にしか思っていないが。
「……我、22の軍団を従える偉大な王、プルソンにこいねがう」
ごくごく小さな声で夏葵は呟いた。
気休め程度の効果しかない言霊。
触媒になるものも、呪具も何もない。
だが意識に働きかけるなら十分だ。
そして、相手が一流か否かを見極めるのにも。
あかりと利なら、比較的近場にいる場合気づくだろう。小田原はぎりぎり、といったところだろうか。
――さあ、誰か気がつくか。
夏葵が目を光らせる中、桜はひたすら無関係に花弁を散らしていた。