銀の魔術師と捕縛の糸

13.桜吹雪に隠れるモノ 01
「久しぶりーっ」
校門をくぐったところでかけられた声に夏葵は振り返った。
それに前後して、容赦ない力でどつかれる。
あかりだ。
「ん……浅井は」
「夏葵見えたからダッシュかけて置いて来た」
「その恰好でか?」
夏葵は思わずじと目であかりを見た。正確には膝上丈のスカートを。
「何よ」
文句でもあるのかとばかりに、あかりの声が冷たくなる。夏葵を睨むあかりの目もじと目だ。
言いたいことはいくつもあるが、夏葵は「いや、いい」と頭を振った。
「そう言えば、香葵は?」
「起きてこなかった」
「あらー、可哀そうに。遅刻かな?」
「お前、口ほどにもそう思ってないだろ」
「自業自得でしょ」
「ああ、その通りだ」
夏葵はあかりと共に、追いついて来た利に頷いて見せた。
「あんまり遅いと新クラス分からないぞ」
「……? ――ああ、クラス替えか。まあ、どうせ俺ら変わらないだろ?」
2年次のクラス替えは成績重視で、上位20位はA組と決まっているらしい。
「替わるとしたらせいぜい利でしょ。化学のあの点数」
「うるせー」
利は嫌な顔をして張り出されたクラス表を見た。
全員A組残留のようだ。香葵はB組。相当な浮上である。
「Bか……」
「50位ならな。古典以外のバランスは取れているし」
「もうひとつあるでしょ。バランス取れてないもの」
夏葵は首を傾げた。利も似たような感じだ。
「……ああ、そうか」
さらに首をひねった利に、夏葵は微かに口元を歪めて「魔術だ」と呟いた。



「そうそう、夏葵。一昨日現れた気配知らない?」
新学期早々の掃除や集会の後に、あかりと利は顔を見合わせてそう言った。
「気配?」
「気配気配。今も西の方にある」
「ああ、あれか。あれは――俺の召喚獣だ」
夏葵は西――別宅のある方に軽く視線を投げた。