銀の魔術師と捕縛の糸
10.浮上 03目が覚めたら、夏葵がつまらなさそうに天井を見上げていた。
顔色はずっと良くなっている。
「夏葵――」
夏葵が生返事と共に、視線だけ向けてくる。
なんだか安心した。
「親父は?」
「どこかで寝てるんじゃないか」
夏葵は興味もなさそうだ。
「いつから起きてた?」
「だいぶ前」
そっか、と香葵は呟いた。
時計を見ると、もう朝の8時を回っていた。
「夏葵、朝飯食べない?ってか食べよ」
夏葵は面倒臭げに二三度瞬きをしてから、のそのそと布団を払いのけた。
香葵は煙草の匂いのするダイニングに飛び込むと、ソファで舟を漕いでいる健一にローキックをして起こすと「朝飯!」と言った。
元気いっぱいな香葵を見た夏葵に「気合い入れて料理なんか作るんじゃないぞ」と釘をさされた。