銀の魔術師と捕縛の糸
11.エピローグ あるいは間章夏葵が暴発した件についてどうなるのかと夏葵以外3人は心配したが、どうなることもなかった。
「大丈夫だ。親父が何とでもする」
夏葵は缶コーヒーを煽りながら、さも当然とばかりにそう言った。
実際大丈夫だったし、何とかなっている。
教員間でどうなったかは知らないが、生徒間ではどうなったのかは、自然と耳に入った。
というより、否が応でも耳に入らざるを得なかった。
「まあ、あいつだったらなあ……」
「何があってもおかしくないっていうか、やっぱりっていうか」
「納得できないわけじゃないんだよね」
「て言うか、そのナリからしてさー」
「つか、それ生で拝めなかったの惜しくね?」
生徒の言い分をまとめるとこんなものである。
誰も彼もが夏葵の異常性をあっさり受け入れているということが異常だ。
結局この事件は、その後に控えた生徒会選挙、考査、休暇というイベントでうやむやになってしまったような感じがする。
そしてその当人は――
「夏葵、あんた……」
今日も今日とて、授業中に居眠りを続けていた。
声をかければ起きるし、起きろと言われると努力は一応ある。
が、隙あらば寝る。
体力も呪力も根こそぎ奪われている状態なので、身体がついてこないらしい。
今日も終業式の最中、ずっと寝ていたらしい。
教師陣は軒並みあきれ果てて、もはや放置である。一部騒がしい陣営もいるが、夏葵が起きだすほどではない。
「平和ね……」
隣で利が頷いた。
「つかの間じゃなきゃいいんだけどな」
あかりも頷いた。
予感がある。事態はこれだけでは終わらない。
「きっとこれから大変よねえ」
「他人事のように……」
「他人事だもの」
あかりはしれっと言い放った。
「夏葵がやるしかないのよ、結局は。わたしたちにできることなんかタカが知れているもの」
「……そうだな」