銀の魔術師と捕縛の糸
8.暗闇に落とされて 0人影の消えた砂利の平原に、足音が響いた。
「行ったか……」
明るい方に吹く風が、彼の黒髪を嬲る。
先に消えたものの追い風となっただろうか。
彼の目には、明るい方に揺らめく影が映っている。
視線を手前に引くと、きらりと光るものが砂利にまぎれている。
彼は首をかしげた。
霞をまとい、ゆっくりと歩き出す。
人が寝ころんでいた場所まで。
冷たい目でそこを見降ろす。
そこに、ひとひらの黄金が残っていた。
彼が手を伸ばすと、触れる直前でふうっと消えた。
彼は機械的に瞬きをすると、屈んだ腰を伸ばした。
明るい方に視線を戻すと、暁光は収束を見せ始めた。
影はもう、見当たらない。
「行ったな……」
彼が見つめる中、暁光は一片のかけらも残さず、闇に溶け消えた。
「生きろよ」
彼が見ていたのは、影の姿でなく、もっと幼い、引き離された、
「生きろ――凪夏葵」